冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 





「おとーたまなんて、だいっきらい!」


 ある日の昼下がり、リリーとリアムの愛娘であるオリビアは、すっかりご立腹の様子で父のリアムを糾弾した。

 事の発端はといえば、オリビアの質問に、リアムが無駄に真剣に答えてしまったことが理由だった。


「オリビア。お父様に対して大嫌いだなんて、絶対に言ってはダメよ」


 オリビアの泣き声を聞きつけてやってきたリリーは、父であるリアムの代わりにオリビアのことを嗜めた。


「おかーたまもきらい! オリビア、もうソフィアとけっこんする!」

「え? 結婚?」


 結局オリビアは、泣きながらリリーの侍女であるソフィアのもとへと行ってしまった。

 残されたリアムとリリーの間には、なんとも言えない微妙な空気が流れてしまう。


「……ねぇ、どうしてオリビアは泣いていたの?」


 不意にリリーに尋ねられ、思わずリアムの眉間にシワが寄った。

 リアムは今、妻であるリリーにどう事の次第を伝えたらよいのか迷っているのだ。

 結局、リアムは答えに迷ったあとで、リリーには誤魔化しは効かないだろうと判断したのか、渋々、事の顛末を彼女に打ち明けることにした。

 
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