冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「わぁ、とっても素敵な花冠ね」
小鳥たちの歌声が、ウォーリック王国に春の訪れを知らせている。
「ロニー、これ本当に私がもらってもいいの?」
シロツメクサで作られた花の冠を受け取ったリリー・スペンサーは、自身の前で恥ずかしそうに俯く少年と目線を合わせて、穏やかな声で問いかけた。
けれど、ロニーと呼ばれた少年は顔を赤らめ、フイっとそっぽを向いてしまう。
「し、仕方ないだろ! エマの奴が、たくさん花を摘んできて、花があまってたんだ!」
エマというのは、今年十三歳になるロニーよりも六つ年下の女の子の名前だ。
血のつながりはないのだけれど、ふたりは実の兄妹のように仲が良い。
「ふふっ、そうなのね。ありがとう。エマだけじゃなくて私のぶんまで作ってくれるなんて、ロニーは優しいのね」
渡された花冠は、お世辞にも出来が良いとは言えなかった。
けれど、一生懸命作られたものに違いないというのは、ロニーの草色に染まった手を見れば一目瞭然で、リリーは微笑ましい気持ちになった。