あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
帆高の質問に対しても、瑠花は沈黙を貫く。エルルカはため息をついて口を開いた。

「仕方ない、私が見せてやろう。こいつの過去をな……」

エルルカがそう言い、呪文を唱える。紫の魔法陣が地面に現れ、黒い光が部屋のあちこちに飛んでいく。その様子を見ながら、未来はそういえばと気が付いたことがあった。

英美里に大地、帆高に瀧はそれぞれが現実の世界で抱えている悩みや秘密を打ち明けてくれた。しかし、瑠花はいつも優しく微笑んでいるだけで自分のことはあまり話さなかった。

あの笑顔の裏にどんなものを抱えていたんだろう。未来の胸に緊張が走る。

未来たちの目の前が暗闇に包まれ、映画館のように空中に映像が浮かび上がった。



未来たちの目の前に現れた映像には、幸せそうに笑う二歳ほどの一人の女の子と両親の姿だった。三人はとても幸せそうだ。

「この二人は瑠花の両親。そしてこの女の子は瑠花の姉。瑠花の両親は一流企業に就職していたものの、瑠花の姉を妊娠したことで結婚。しかし、この時は幸せにあふれていました」
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