あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

そう呟く帆高は福岡出身だ。小説の中では考古学者という設定らしい。

「緊張する……。うまくできるかな……」

髪をツインテールにし、宝飾が施された長い杖を手にし、紫の花柄のドレスを着た女の子が体を震わせる。彼女は藤原英美里（ふじわらえみり）。大阪出身だが、何故か関西弁は話さない。小説の中ではヒーラーだ。

「……もうやるしかねぇのか」

そう言うマントのついた鎧姿の男子は、早川大地（はやかわだいち）。沖縄出身で小説の中では剣士だ。

「……」

無言で街を見つめる熊の耳がついたフードのついた衣装を着ているのが南雲瀧（なぐもたき）。広島出身で、小説の中では弓使いらしい。しかし、未来が瀧の声を聞いたのは自己紹介をした時以来一度もない。

「みんなで頑張れば、きっとすぐに素敵な小説ができるよ！」

そうみんなに明るく言うリボンのついたとんがり帽子にロリータ服を着ている女の子は、足立瑠花（あだちるか）。東京出身で小説の中では魔女。手首にはピンクのリボンが巻き付いている。