破 恋

「千里っ、起きて」
と、声をかけるが
起きない····
体を少し揺すってみるが···
起きる気配はなく·····

「千里、遅刻するよ。」
と、今度はさっきより力を入れて
揺すってみる。

すると、ガシッと
腕を取られて引っ張られ
千里の体に倒れこんでしまう

千里は、私の体を抱き締めながら
肩を振るわせて泣いている

初めての感覚に
言葉が·····でない·····

付き合っているときに
千里が泣いたのは
プロポーズを受諾した時
瞳に涙をためた千里を見ただけ。

私達は、喧嘩をした事もなかった。

喧嘩をして仲を深める恋人達も
いるだろうが·····

私達は、お互いを大事に大切にし
何よりもお互いを
優先にしていたから

常に千里は私の元に····

私も千里の元に·····いた。


私は、思わず千里を抱き締めて
しまい····

私の顔を掻き揚げ
千里の唇が近づいてくると
桜田さんの顔が目にちらつき
「いやっ」
と、顔を背けると
千里は、自分の拳を
床にぶつけて
苦しむような声をだしていた

私は、素早く千里から離れると
千里は、よろよろと立ち上がり
玄関に向かう

私は···なぜか····
「···せん···り···」
と、口から

振り向いた千里の顔は
悲しみと疲労感しかなく
私は、次の言葉をだすことは
·······できなかった。
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