君は愛しのバニーちゃん
すると突然、チョロチョロとやって来た山田に足元をすくわれ、俺は後ろへよろけるとそのままバシャリと尻餅をついた。
(……クソッ! また、お前かっ!!! 山田!!!)
山田のお陰で、水攻めから救われた……なんていう事実はさておき。山田の存在は、邪魔で仕方がない。
(っ、……いつか、覚えてろよっ!)
プリプリとケツを振りながら近付いてきた山田の頭に触れると、ポンポンと軽く叩いて宣戦布告する。
「瑛斗先生、大丈夫? ……勝負は、ミト達の勝ちだねっ」
(え……? いつの間に……俺、負けたの?)
そんなことを考えながら頭上を見上げてみれば、そこにはキラキラと輝く満面の笑顔の美兎ちゃんがいる。
山田に負けたことは悔しいが、この笑顔が見れるのなら、まぁ……”負け”でもいいか、なんて。そんな風に思ってだらしなく微笑んだ俺は、その視線を何気なく美兎ちゃんの胸元まで下げてみた。
(———!!?!!? グオォォオーーッッ!!♡!!♡!!♡)
ブシューッと盛大に鼻血を吹き出すと、そのままゆっくりと倒れて仰向けにひっくり返った俺。
「……キャーーッッ!!!? 瑛斗先生が、死んじゃうっっ!!!!」
心配そうに駆け寄る美兎ちゃんを他所に、俺の血走った瞳は美兎ちゃんの胸元を凝視したままギンギンにカッ開いた。
(これが……っ。試合に負けて、勝負に勝つ……ってやつなのか……!!!? なら……っ、いくらでも試合に負けたって、いい……ッッ!!!!)
水面から薄っすらと顔を出したまま、ドクドクと流れてゆく俺の鼻血。まるで事件現場かのように赤く染まってゆく川の中で、俺は歓喜の涙を流しながらゴボゴボと泡を出して微笑んだ。
(おっぱい……バンザイ♡♡♡♡)
スケスケの美兎ちゃんのブラジャーをガン見し続けながら……このまま死んでもいいと、本気で思えた。この日の思い出は俺の心に深く刻まれ、一生忘れることはないだろう。
美兎ちゃんにもまた、この日の惨劇は恐怖体験として深く刻まれ、一生忘れることのない思い出となった。
——これが、後に語り継がれることとなる【給水・夏の陣2020】。
鼻血もまた、後ろに倒れながら噴き出せば綺麗な放物線を描くのだと。そんな新たな発見をした。
キラキラと輝く赤い飛沫を上げて、見事な虹を作った——2020年、夏の思い出。