その瞳に映るのは


考えれば考える程に自分が嫌になっていた。






でも、仕事が終わって外に出ると無意識に、昨日成瀬くんの自転車が停めてあった街路樹に視線が向いた。





「……成瀬くん?」



幻かと思った。


まさか成瀬くんがいるとは思わなかったから。


私が声をかけたら微かに微笑んでくれた。

でもすぐに謝罪された。




昨日、私が店に来ないでと言ったから。



自分でそう言ったくせに、私の言葉を気にして謝罪した成瀬くんを見て胸が苦しくなった。


だからずっと外で待っててくれたの?

そう思ったけど少し前まで宮野くんと一緒だったと言った。



宮野くんを怒らせたと。



ずっと成瀬くんの表情が曇っていたのはそのせいなのか…。

5限目に私が泣いたせいで宮野くんが渡辺くんに責められたから。



そう思って言ったけど成瀬くんは否定した。
自分が宮野くんを怒らせて見限られたと。



それで私と話したくなって来たと言ってくれた。



それが少し嬉しかった。



何でもよかった。

成瀬くんが私の事を少しでも考えてくれて会いに来てくれた事が嬉しかった。


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