ボーダーライン。Neo【上】
「そう、この間クランクアップした映画。それの完成披露試写会が二十五日の午後に変更になってて。……スタッフからこちらへの伝え漏れらしい。
勿論、ちゃんと確認してなかった僕のミスだ」

 すまない、と竹ちゃんは下がり眉でこうべを垂れた。

「そっか」

 ーー内田や奈々に謝っておかないとな。

 仕事なら仕方ない、と肩を落とすと、竹ちゃんが訊ねた。

「その日、何か予定でも有ったのか?」

「え?」

 パッと顔を上げ、ああ、と幾らか口元を緩める。

「高校ン時のクラス会が、夕方からあって」

「夕方?」

「うん」

 そうか、と呟き、竹ちゃんは再度手帳を見つめた。

「それが何時までかは分からないけど。多分、途中参加は出来るんじゃないか?」

「え?」

「試写会は十五時から十九時キッカリまで。それ以降は、そのまま立食パーティーがあるけど、こっちに何か予定があるなら抜ける事も可能だから」

「え。それってどうなの、大丈夫なのか?」

「まぁ、今回は主題歌を勤めただけで、俳優陣じゃないからな? 何ら問題はない」

 そう言って竹ちゃんは笑った。

 ーーそうなんだ。

 途中参加出来るのか、と思い、安堵する。

 それで潰れたオフなんだけど、と彼は本来の用件を告げる顔つきになった。

「二十六日に入れた午前の仕事を、二十一日の午前につめてオフにするから」

「……って事は二十六が休み?」

「そう。年末と正月はフル稼働になるから、僕としてもこの辺で休みを取って貰いたい」

「分かった」

 スケジュールの変更を丁度聞き終わった時。

「ではHinokiさん、お願いしまーす」

 撮影室のドアが開き、スタッフから声が掛かる。

「はい」

 営業スマイルを作り、僕は扉へと歩を進めた。

 後で内田にメールを入れておかないとな、と思い、小さく笑った。

 ***

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