ボーダーライン。Neo【上】
「今サチが思ってる事。当てていい?」

 コウちゃんは笑みを浮かべて、言った。

「今。そいつンとこ行きたいって、そう思ってんだろ?」

 あたしは真っ赤になりながらも、無言で地を見つめ、コクンとひとつ、頷いた。

「いいよ、行け」

 彼の言葉に背中を押され、あたしは駅へと駆け出した。

 秋月くんは、まだあの工事現場で働いているだろうか?

 彼に関しての近況を全く知らずに来てしまったので、工事現場へ着いた時、急に不安に襲われた。

「ああ、あのバイトならもう帰ったよ?」

「え?」

「ついさっきだから。まだ近くに居るんじゃないかな?」

「そう、ですか」

 有り難うございます、とヘルメットの作業員にお辞儀をする。

 けたたましい現場を後にすると、あたしは仕方無く、携帯を取り出した。

 秋月くんのアドレスを呼び出し、電話を掛けるが、コール音もせずにアナウンスが流れた。

 ーーえ? うそ。

「電源、切れてる」

 恨めしい気持ちで、携帯を見つめた。

 そこで、あれ? と背後から声を掛けられた。眉をひそめて、振り返る。

「きみ、可愛い~ねぇ。今ひま? 俺らと飲みに行かない?」

 ホスト風の身なりをした、若い男の人が二人。あたしはかたい表情のまま、おずおずと後ずさった。
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