ボーダーライン。Neo【上】
 そんな時。タイミングが良いのか悪いのか、僕の携帯に着信があった。

 電話の相手は、ディスプレイから明らかな様に、マネージャーの竹ちゃんだ。

「ごめんちょっと」

 僕はソファーから腰を上げ、寝室に向かう。

 お疲れ様です、と言って回線を繋ぐと、竹ちゃんは明日の収録現場で言い忘れた事があったと謝り、矢継ぎ早に用件だけを伝えてくれた。

 電話を切り、寝室の外に目を向けた。扉は閉めているので、今茜がどんな状態かは窺い知れないが。

 僕は気が重く、ため息を落とした。

 リビングへ続く扉を開けると、さっきまで座っていたソファーにその姿はなく、すぐ側のゴミ箱の前に、茜は座り込んでいた。

「茜……?」

 どうしたのだろう、と顔を見ると、やはり彼女は未だ泣き顔で、顎に滴らせた涙をポタリと床に落とした。

 茜は僕に心配させまいと気丈に振る舞い、ぎこちない笑みを浮かべた。

「……ごめんね。お節介かなって思ったけど、ゴミが一杯だったから。わたし、出しておくね?」

「……ああ、うん。悪い」

 ーーそれでそんな所に座っていたのか。

 セフレを解消するのが辛く、何か別の事をしていないと気が滅入る。理由はそんな所だろうか。

 僕はそれ以上、何も言えなかった。

「じゃあ。わたしはもう、帰るから」

 茜はゴミ袋を一つ持つと、そそくさと玄関に向かった。

 その動作は挙動不審で、いつもの茜らしく無かったが。

 彼女に罪悪感を抱く僕は、気にも留めなかった。

 ***

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