AIが決めた恋
「3年の間に、色々なことが変わってた。」

お兄ちゃんが、ぼんやりと遠くを見つめながら言った。
“色々なこと”
それはきっと、私が軽度の男性恐怖症になったことを遠回しに言っているのだろう。私が男の人を怖いと思い始めたのは、中学2年生の頃で、丁度お兄ちゃんは寮生活をしていた。

「僕がいなかった3年間のことを、陽芽から聞いたよ。」
「そう。」
「辛い時、傍にいられなくてごめん。」

お兄ちゃんが私を真っ直ぐに見つめる。その目は、とても悲しそうで、切なそうで、私は罪悪感を感じた。

「お兄ちゃんが謝ることじゃないよ。」
「いや、それでも僕は謝らなくちゃいけない。」
「どうして?」
「どうしても。」

どう考えても、お兄ちゃんの所為(せい)ではない。確かに、あの3年間でお兄ちゃんが1度でも帰ってきていたのなら、結果は少しだけでも変わっていたかもしれない。でも、お兄ちゃんにはお兄ちゃんの生活がある。私にばかり構っているわけにはいかない。

「無理に以前のように仲良くしなくてもいいよ。藍が関わりやすい形で関わって。そして、今日はめいっぱい楽しもう!」

お兄ちゃんが笑う。
お兄ちゃんは昔からいつだってこうだった。私が落ち込んでいる時に、楽しい計画を立てて、私を励ましてくれる。正直、3年も会っていない中で、どう話せばいいのか迷っていたけど、お兄ちゃんは何も変わっていない。そのことにとても安心した。

「ありがとう。」
「わあ〜!藍が笑った〜!どうしよう、超可愛い。まずい、このままでは不審者に狙われかねない!心配だ!」
「大袈裟だよ。」

お兄ちゃんはいつも私の心配をしてくれる。それは嬉しいけれど…でも、お兄ちゃんも、高瀬AI研究所附属高校に通っていたのだ。ということはパートナーがいるはずで、基本的に卒業と同時にパートナーとは正式に婚約するはずだ。既にお兄ちゃんが誰かと婚約をしていても不思議ではない。
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