AIが決めた恋

助けてください

完全にはぐれてしまった。どうしよう。このショッピングモールは、お兄ちゃんの大学の近くにあるショッピングモールであるから、右も左もよく分からない。どのお店に行くのかや、その道のりについては、全てお兄ちゃんに任せていた。
こういう事態に陥った時は、先ず冷静になることが大切だ。そう。私はスマートフォンを持っている。高校へ入学すると同時に両親に買ってもらったものだ。まだ操作にはなれていないが、電話くらいならできる。
お兄ちゃんの連絡先を出し、電話をかけようとした時、逆にお兄ちゃんの方から電話がかかってきた。

「もしもし。」
「もしもし、藍!?大丈夫!?」
「あ、えっと、大丈夫だけど、はぐれちゃったみたいだね。」
「ごめん、少し目を離した隙に…。」

お兄ちゃんは悪くない。私が余所見(よそみ)をして、人とぶつかってしまったのが悪いのだ。

「今、どこにいる?」
「ごめんなさい。それが、分からないの。」
「近くにあるお店は?」
「えーっと…」

私は辺りを見回してみるが、かなり人が増えていて、よく周りが見えず、目印のようなものが見当たらない。

「人が多くて、よく周りが…。」
「そうか。じゃあ、初めに集合した時計台は分かるか?もし分かれば、そこにもう一度集合しよう。」

時計台。それは初めにいた場所だ。それならなんとか分かるかもしれない。

「分かった。時計台、探してみる。」
「ありがとう。じゃあ、時計台の前で。」
「うん。」

そう言うと、通話が切れた。
さて、時計台を探さなければならないが、先ずここが何処かよく分からない。取り敢えず、来た道を戻ってみよう。
先程行ったお店を見つければ、何とかなりそうだ。
そう思ったが、歩いても歩いても、見当たらない。
その時、ようやく気がついた。
私は、迷子だ。
高校1年生になってまで迷子になるだなんて、恥ずかしい…。お兄ちゃんにもう一度電話をするべにだろうか。いや、でも、できるだけ迷惑をかけたくない。
私は途方に暮れて、近くにあったベンチに座った。
これからどうしよう…。

「あれ?湖川さん?」

俯いていると、誰かに声をかけられた。
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