AIが決めた恋
「私は佐倉くんが、誰と付き合おうと全然構わないよ。だから、もし仮に好きな人ができたら、私のことを思って躊躇(ためら)ったりしないでね。それだけ言いたかったの。」

そんな。それは何だか寂しい。
確かに僕は今のところ、桃野さんに恋愛感情は抱いていない。それは桃野さんも同じだろう。
けれど、『躊躇ったりしないで』なんて言われてしまうのは、少しだけ寂しい。
僕が、彼女にそう言わせてしまっているのかもしれない。彼女は僕に興味を持っていないけれど、僕だってそれは同じではないのだろうか。

「ごめん。」
「どうして佐倉くんが謝るの?」

分からない。でもきっと、僕は桃野さんを心から好きになれる自信がないのだと思う。
最低だ。いくらなんでも残酷すぎる。

「今まで黙っていたけど、僕は、『恋愛』というものがよく分からない。どうしても、恋愛感情なんていうものを信じることができないんだ。」

正直に話してしまったが、呆れられただろうか。恐る恐る桃野さんの表情を確認したが、特に彼女の表情が変わった様子は無かった。

「もしかして、頑張って私の事好きになろうとしてる?」
「えっ?」
「その顔は図星だね?あはは!」

桃野さんが突然お腹を抱えて笑った。

「そんなことしなくていいよ〜!佐倉くんって真面目なんだね〜、面白〜い!」

桃野さんに笑われてしまい、深刻に考えていた自分が恥ずかしくなった。
相手の言葉の意図を必要以上に考えてしまい、話しを大きくしてしまうことが、僕の悪い(くせ)だ。物事は僕が考えている以上にシンプルであることがよくある。

「お互い束縛(そくばく)はせず、自由にやっていこうって、ただそれだけの話!」

別に、パートナーだからといって、無理に相手を好きになる必要はないんだ。
やはり、僕達は僕達の関係性を尊重すれば良い。

「そうか。それなら──」
「あ!!」

『それなら良かった。』と僕が言い終わる前に、桃野さんが大声を上げた。前方を指さしている。

「どうしたの?」
「藍ちゃん発見!!」
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