AIが決めた恋
「あ。」
「どうしたのですか?」
「あれ、桃野さんと真島くんじゃないかな?」

一方は小柄な女子で、もう一方は身長の高い男子。間違いない。あれは、桃野さんと真島くんだ。

「本当ですね。見つかって良かったです。」

真島くんが見つかったということは、湖川さんと2人で話せる時間は、これで終わりだ。それが何故か少しだけもどかしい。

「藍ちゃ〜ん!真島くんいたよ〜!」

桃野さんが息を切らせながら、そう言った。

「ごめん。気づいて後ろを振り返った時には、君がもういなくて。心配したが、無事で良かった。」

真島くんが、湖川さんを見つめて、そう言った。

「私こそごめんなさい。ちゃんと、隣を歩いていなかったから。」
「それは君が謝ることじゃない。だって君は、男性── いや、何でもない。とにかく、無事か?」

真島くんが一瞬何かを言おうとしてやめたのが分かった。一体何を言おうとしていたのか気になったが、僕が口を挟める雰囲気はない。

「はい、大丈夫です。あ、佐倉くん、そう言えば、消毒を返していませんでした。ありがとうございます。」

湖川さんが僕に消毒を手渡し、僕はそれを受け取った。

「佐倉?どうして君が?」
「湖川さんが怪我をしていたから、僕が消毒を貸していたんだ。」

どのように説明したら良いか分からず、取り敢えずそう言った。しかし真島くんは、何も言わず、僕から視線を逸らした。

「君、怪我してるのか?」
「ほんのかすり傷です。ただ、少し痛むので、歩くのは遅くなってしまうと思います。なので、先にゴールしていて良いですよ。」

湖川さんがそう言うと、真島くんは、湖川さんの目の前で、背中を向けてしゃがんだ。
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