最後に見たのは君の泣いた顔だった
1.未来に駆ける

歯車

ーー私の歯車が狂いだしたのはいつだったっけ…?


チックタック…。

チックタック…。


空来から貰った腕時計は、今もしっかり動いて私に時間を知らしている。


なのに、私の心はあの日から変わっていない。



「愛未、遅れるぞ?川なんて見てないでさ」


「あ、ごめん。空来、後ろにのっけてよ」


「バーカ、色々違反だっての。カバンは乗っけてやるよ」


って言われて数分後、私が自転車に乗っている。すぐにバテたのは私の方だった。


走る側と自転車に乗る側。
ちょっぴり自転車を長めに乗りながら交代する。

そういうことを続けていたらすぐに学校についた。

…といっても、30分近くかかった。


「きっつー」


空来が駐輪場に自転車をおいて、私の横スレスレに歩く。


思ったけど、空来って距離感近いよね。
でも、随分と成長したな…。



初めて空来と会ったとき、私は右も左もわからない小学2年生だった。

平均身長よりも高めで、他の子達より頭一個分くらい変わってた。

転校生は珍しかったみたいで、あまり打ち解けれずに一人いることの方が多かった。


君が話しかけてくれるまでは。


「俺が今日からお世話係だから、わかんないことあったら聞いて!俺、ここのこといっぱい知ってるから」


お世話係なんて、当時はまったくわかってなかったし、それが高校まで続いてるなんて…。

あのときの私が知ったら驚くんだろうなぁ。



空来の黒い瞳が、月明かりのように照らしていた。

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