最後に見たのは君の泣いた顔だった

空来

○●○●○●○

「今日の愛未、可愛い」

この言葉に嘘偽りなんてなくて、嘘だというなら


「そのピン止め可愛い」


こっちの方だと思う。愛未は鈍いから気づいてないだろうし、俺はこれから先も言うつもりはない。



ーーお前が好きだ。



それは、俺と愛未の間には高い壁だ。

幼なじみっていう壁は越えちゃいけない。

おばさんとも約束をした。



ーー俺たちは兄妹だ。



正確には兄妹だと勘違いした。


でも、それを初めて知ったとき、俺は大げさにも膝から崩れ落ちた。

子どもなりに悟ったつもりでいた。



知りたくなかった。

ただ、好きでいたかった。

幼なじみでいたかった。




俺とは家も違う、名前も違う、血の繋がりもない彼女は、確かに俺の母親の娘だ。


いや、俺と母さんは血が繋がっていないし、愛未の今の家庭は親戚の家だ。


愛未の実の父親は飲酒運転のトラックに…。


でも、愛未本人はきっと覚えていない。



あの人が正式に父さんと家族になる誓いを交わしたあの日、純白に包まれたあの人を見て"キレイ"だと思った。

でも、そのキレイが一つの家庭の"崩壊"だった。


あの人は愛未を捨てたんだ。


醜い現実を知っているのは、俺とあの人、愛未の義親だけだ。

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