手紙。 〜拝啓、先生あの日の約束は有効ですか?〜
一章

5月、キミの面影が懐かしくて、寂しくてたまらない。



先生として慣れて来て、今は放課後。

授業で回収したプリントやノートを確認しながら、【見ました】のハンコを押してコメントを添える。名簿にチェックを入れて、クラスのボックスに入れて次は─︎─︎……っと。


「せんせー! 藤田先生、いますかー?」

「あら菊池(きくち)さん、どうしたの?」

「あ、先生! ノートとプリント持って来ました〜」


菊池さんこと、菊池咲(きくち えみ)さん。いつもボーッとしていて眠そうな彼女は、家庭の事情でアルバイトを3つも掛け持ちをしている。


「菊池っ! まーたお前か。全く……藤田先生が優しいからって」


菊池さんに怒っているのはベテランの香川(かがわ)先生。私が高校生の時からいる先生だ。



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