新妻の条件~独占欲を煽られたCEOの極上プロポーズ~
 フランネル生地のシャツと乗馬用のズボンでの騎乗は暑くて、額から汗が滲んでいるほどだ。
 
 広大な牧場の敷地を四十分ほど駆け巡らせ、手綱を持つ左手首の時計を見やる。もうそろそろ夕食の支度の時間だ。

「戻らなきゃ」

 私は雪丸を厩舎へ向かわせた。


 リズムよく常歩(なみあし)で戻りながら視線を動かした先、厩舎に近い柵のところで、白髪のおじいちゃんと背の高い男の人が立ってこちらを見ていた。
 
 あの人は誰?
 
 おじいちゃんの隣に人がいなければ、大きく手を振っているところだ。
 
 百メートル以上は離れているから男性の顔は見えないけれど、スーツを着ているように見える。
 
 きっと馬を買いにきた人ね。
 
 近づくと、おじいちゃんはいなくなり、若い男性ひとりだけになっていた。

「こんにちは!」

 馬を買いにきた人なら愛想よくしなくては。

 私はニッコリ笑顔をつくり、スーツを着た男性に向ける。その人は私が今まで見たことがないほど端整な顔立ちをしていた。

 俗に言うイケメン。でもただ顔がかっこいいだけでなく、あふれ出る気品に圧倒される。年齢は二十代後半から三十歳くらい? けれど落ち着いた雰囲気もあってそれより上かもしれない。

< 2 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop