御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
主催者側の席で待っていると、しばらくして目立つドレスの美砂が人混みを縫ってこちらへやってきた。

「沙穂ちゃん! 透くん! いたいた!」

シャンパンのグラスごと手を振りながら私たちに混じり、ひと息つく。
おかしいな。サロンでは池畠さんを待っていたはずなのに、今は美砂ひとりだ。

「お姉ちゃん。池畠さんは……?」

尋ねると、美砂は苦い顔をした。

「それが大変なの。お仕事でトラブルがあったみたいで、行かなきゃならないんだって」

「ええ!? トラブルって?」

「分からない。お披露目の時間までには来てねって伝えたから大丈夫だと思うけど」

このタイミングでそんなこと、ある?
ビックリして透さんの顔を見た。真顔で「どうしたんだろうね」と首をかしげている。これは、どっち……? 本当に偶然?

「あ、透! 沙穂さん!」

今度は聞き覚えのある声が。

「……葵」

あからさまに不機嫌になった透さんに、葵さんはブンブン手を振って近寄ってくる。

「あら、どちら様?」

美砂が尋ねると彼は「透の兄の葵です」と答え、私たちをよそにふたりのボルテージは上がっていく。

「まあ! はじめまして。透くんと仲良くさせていただいています、沙穂の姉の乙羽美砂です。ご兄弟でよく似てらっしゃるんですねぇ」

「そちらこそソックリな美人姉妹だ。沙穂さんがお嫁さんであなたがお義姉さん、透がうらやましいよ」

似ていると感じたのは気のせいじゃなかった。やたらと話の合うふたりは大盛り上がりとなり、キャーキャーと騒ぎながら世間話が止まらない。
ここに付き合っていたら疲れそうだ、という透さんの提案により、私と彼はテラスへ移動した。
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