御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
この突然の告白に、現実に引き戻されたのだ。

うれしさを感じたのは一瞬で、この手紙も、今までの言葉も、すべて美砂に向けられたものだと思い出した。ただのゴーストライターである私には、なんの言葉もかけられてはいない。

夢中になりすぎて忘れていた。こんなことを一年も続けて、私はなにをしていたのだろう。自分を理解してもらえたと錯覚し、透さんを騙していただけだ。

正気に戻り、もう手紙の交換を続けられないと美砂に申し出た。
すると彼女はなんと。
『え? まだやってたの? もうお友達だからやめていいよ』と。

私は透さんに、取り返しのつかない残酷なことをしてしまった。

勇気を出して綴ってくれたのに、私は彼の想いを美砂に黙ったまま、返事を書かずに終わりにした。だからこれが最後の手紙となったのだ。

思い出すとつらくなり、私は過去の手紙をすべて箱に戻し、蓋をした。

『今も昔も美砂に対してそういう感情はないよ』という透さんの嘘を思い出し、さらに胸が痛くなる。

「……ごめんなさい。透さん」

ずっと謝りたかった。あの手紙のあと美砂からはなにも聞いていないし、おそらく告白はなかったことになっている。それか「手紙の交換をやめよう」という美砂の提案を告白の返事だと判断したのかも。

透さんはなにも言わない美砂をどう思ったのか。どんな気持ちでその後も〝友人〟として付き合ってきたのかを想像すると、自分の愚かさに涙が出てくる。
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