御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
池畠さんの笑みが突き刺さる。まるで了承しろと命令をされているみたいに。怖い……。

「沙穂ちゃん。大丈夫?」

透さんの声にハッとし、心配そうに覗き込む彼を見上げた。

「俺はどちらでも大丈夫だよ。沙穂ちゃんがまだ先がいいと思うなら、時間を置くし」

優しい言葉に胸がキュッとするが、美砂と透さんの仲を取り持ちたいのならここは同居を受け入れるべきなのは分かってる。美砂もこんなに喜んでるし。
でも、私は池畠さんとひとつ屋根の下なんて、本当に無理……。

たまらず、震える手で透さんのスーツの裾を引っ張りながら、助けを求めるように訴えた。

「私……透さんと、ふたりがいいです」

彼にだけ聞こえるようこっそり耳打ちすると、透さんはカッと目を開いた。困らせたよね。私とふたりなんて。
訴えたあとで申し訳なくてすぐに後悔したものの、とはいえ代わりの案が思い浮かばず、私はうつむくしかなかった。

……あれ。というか、透さんとふたりで住むってお願いしてみたはいいものの、それって私の心臓の方が持たないんじゃ……。

「社長」

透さんは、私の背中を手で支えながら、真面目なトーンで父を呼んだ。
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