ノイシュタット・エスケープ
 


 荷物は煩わしかったから身ぐるみ全部引き剥がして来たんだ。

 クリーム色のお気に入りのワイドシャツにゆったりめのブラックパンツに素足にはゴールドの金具がついたローファー。お洒落は好きだけど名称覚えてらんないから全然自分に活かせない。


 かろうじて身につけたサコッシュに全財産と煙草とライターを忍び込ませた。




 こじ開けた車窓に顎を置いてふーっと灰色を吐き出す。心地よい風である。






「未成年めかしてるう」




 無人だった箱の中、一人の自分以外があった。人間。人間入って来ちゃったか、早くも。
 私とは逆サイドの席に座って窓のへりに頭を置いている人間がいる。下手したら跳ねられてしまいそうで危ないよ、ってトンネルをくぐる間際で思って、開けて光が射し込むとこっちを見てた。



「未成年めかしてるじゃなくて、事実未成年なんすけど」

「だめじゃんたばこ」


「二十歳未遂だからノーカン」


「いー表現だね」




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