夜空に見るは灰色の瞳
「んー…………物を見ないと、加減が難しいんですよね。まあでも、やれないことはないのでやってみましょうか」

「……はい?」

「ドアを閉めたまま、こっちの部屋から魔法をかけるんですよ。ほら、前に良い夢が見られる魔法をかけたことがあったでしょ。あんな感じです」

「……いや、その魔法をかけてるのは実際に見てないし。っていうか、勝手にひとの家で実験を始めないで!」

「大丈夫ですよ。万が一失敗しても、マットレスがなくなるだけで他に被害は及びません」

「私には甚大な被害が及んでますけど!?」


マットレスのないベッドで寝るなんて、くたびれたマットレスで寝るより辛いではないか。


「まあ、失敗すると決まったわけではありませんし、とりあえずやってみていいですか?何事も挑戦してみないことには始まりませんし」

「いいわけあるか!!ひとのマットレスを練習台にするな!」


この後数十分に渡って続いた攻防戦の結果がどうなったかと言うと、まあ私が負けた。または、諦めたとも言う。
だって、マットレスがなくなるよりはずっとマシだろう。

そして私は、新しいマットレスの素晴らしさを、次の日の朝に実感することになる。

前のマットレスの時は朝目覚めると体のどこかしらが痛かったのに、新しいマットレスではそれが全くなかったのだ。
快眠出来たおかげで、アラームより早く起きることも出来た。
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