夜空に見るは灰色の瞳

「あ、いた！叶井さーん」

「やばっ」


聞こえた三永ちゃんの声に、スピードを速める。
こんなところを主任に見られたら、バタバタ廊下を走るなと怒られるのだろう。

距離はまだ充分にあるので、急いで鞄を持って外に出ればおそらく逃げ切れるが、主任に掴まったら逃げ切れない。
どうか主任に遭遇しませんようにと願いながら、ロッカールームに駆け込む。

先客が居たことに思わず肩を跳ね上げてしまったが、同じように驚いているのは主任ではなく三永ちゃんの同期の子だったので、ホッとしつつ驚かせたことを詫び、ロッカーから引っ張り出した鞄と上着を手に、入ってきた時の勢いそのままに飛び出す。

しばらく進んだところで「叶井さーん！」と声が聞こえて振り返ると、三永ちゃんがロッカールームの前で足を止め、肩で息をしながら悔しそうにこちらを見ていた。


「ごめん、三永ちゃん。でも誤解だから！じゃあお先に」

「次は絶対お話聞かせてもらいますからね！」


お疲れ様でした！と三永ちゃんがやけくそ気味に返す声を聞きながら、駆け足のままで外に出て、そこでようやく足を止めて一息つく。