お仕えしてもいいですか?

 ベッドルームに入る木綿子を笑顔で見送ると、桜輔はそのままキッチンに足を踏み入れた。

 木綿子が寝ている間に、明日の朝食の下準備をするためである。

 フレンチトーストは木綿子の好物であり、桜輔の得意料理である。

 翌朝、一番美味しい状態で提供するためには、前日からの準備は欠かせない。

 袖のボタンを外し、肘まで腕まくりして、エプロンをつける。すかさず冷蔵庫から卵と牛乳を取り出し、卵液を作る。卵液に浸すフランスパンは仕事帰りに馴染みの店で購入済みである。卵と牛乳は桜輔自ら足を運んで選んだ契約業者から新鮮なものを届けてもらっている。

 食べ物であれ、身に着けるものであれ、木綿子には最高級のものが相応しい。

 桜輔は木綿子のためにソファ、ベッド、部屋着に至るまですべて最高級品を取り揃えた。

 万が一木綿子に気に入ってもらえなければすべて買い直すつもりでいたが、桜輔が用意した物について彼女が不満を漏らしたことはない。

 それがまた、桜輔の執事として矜持を大いに満足させる。

< 18 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop