キミと、光の彼方へ。
―――ヒューッ、ドドンっ!


夜空に花が咲いた。

次々と打ち上がり、広大なキャンパスを彩っていく。

星形だったり、笑顔だったり、ハートだったり...。

バラエティーに富んでいて見ていて飽きないし、むしろ段々と高揚してくる。


「花火ってすげえな」

「えっ?」

「桑嶋さん、もう笑顔だもん」


私、いつの間ににやけていたのだろう。

みっともない顔、していなかっただろうか。


「俺も花火になりてえな」

「は?」

「んだよ。また意味不明なこと言ってるとか思ったんだろ?」

「うん」

「ひでえな。今、ちょっと良いこと言ったと思ったんだけどな...」

「どこが?」

「わかんねえならいい。いずれ分かる」

「なにそれ」


意味不明。

それは出会ったあの日からだ。

やたらと怪我を気にし、やたらと私を気にかけてくれた。

それは自分と同じような人間に惹かれてしまうという人間の1つの心理故なのだろうか。

そんなことを考えながら花火を眺めていると、巾着に入っていたスマホがブーブー鳴っているのに気づいた。


「もしもし」

「ちょっと~珠汐奈!今どこ?もう花火始まっちゃったよ!」

「分かってる。私ちょっと迷っちゃって...今からそっち向かうから場所教えて」

「ったくもう、ホント方向音痴なんだから。車道歩いて来ればすぐ分かるよ。琉がペンライト振り回してるし、さゆちゃんは、頭に光るカチューシャ着けてるから、それ目印にして。今度こそ迷わないで来てよね」

「ごめん。すぐ行く」


急いで電話を切り、車道へと歩き出す。


「おいっ!どこ行くんだよ!」

「砂良たちと合流しなきゃ。妹も待ってるから早く行かないと...」

「待て」


私の左腕が強引に掴まれた。


「あと1分だけ、俺といてほしい」

「えっ......あっ、うん......」


私は夜空に高く高く上がっていく花たちを見つめながら、掴まれたままの左腕の熱を感じた。

なぜこんなに胸が苦しいのだろう。

少しだけ、ほんの少しだけ、寂しいと思ってしまうのは、どうしてだろう。

花火が消えてなくなるのを、こんなに切ないと思ってしまうのはなぜだろう。


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