二人の距離~やさしい愛にふれて~
それから理花と恭吾は恵子や誠一、陽斗の分もケーキを包んでもらった。

保冷剤を多めにしてもらい、アイスコーヒーもテイクアウトで頼んだ。

「さすがに保冷剤多めって言ってもそんなに長くは外にいられないな。」

「うん。そうだね。」

ケーキの箱詰めを待っている間、改めて店内を見渡す。
そう広くない店内は2人でやっていけるのだろう人数がやっと入るくらいだった。
ふと、横の引き戸に目が止まる。

『古本屋 砂時計』

恭吾は小さなプレートに印字された文字を読み、古本屋さんがあるって言っていたことを思い出す。

「そういえば、古本屋。」

恭吾が呟くと、理花も「あっ。」と思い出した様子だった。
その引き戸を開けてみると、そこは所狭しと本棚が並んでありぎっちり本が直されていた。

引き戸に掛けられている大きな鈴が鳴り、奥から小さなおばあさんが顔を出す。

「いらっしゃい。どうぞ。」

そう言うと、奥にある揺り椅子に座った。

「本見ていくならケーキ預かっておきますね。」

店員さんが気をきかせてくれる。
理花は嬉しそうに恭吾の顔を見ると、中に入っていく。
恭吾は理花の後ろを追って歩き、真剣に本を見ている理花を見つめる。
本屋さんほどの広さはなく、ゆっくり見ても30分もかからなかった。
数冊本を手に持ったまま揺り椅子に座ったおばあさんのもとへ行く。

「あのっ、こ、これを。」

本をおばあさんに手渡す。

「1、2、3…6冊ね。じゃあ、600円ね。」

「1冊100円なんすね。」

恭吾がおばあさんに話しかけているうちに理花はお金を渡す。
値段の設定は基本的に100円だということや、隣のカフェはおばあさんの孫がしていること、もともとはおばあさんが嫁いできたお屋敷だったことなど話してくれた。
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