二人の距離~やさしい愛にふれて~
久しぶりの帰宅
理花は恭吾の言葉に胸が締め付けられた。自分のこと一番嫌っているのは自分なんだと気づいたのだ。
戸惑った顔をしている理花の頭をぐしゃっと撫でると「帰ろう」とまた恭吾は歩き出した。

駅から理花の実家までバスが出ているが理花の希望で歩いて帰ることにした。

「こんなに歩いたの久しぶりだから明日は筋肉痛にでもなるんじゃないか?」

「へへっ、そうかも。でも最近はねリハビリ室で運動してるんだよ。」

「えっ?すごいじゃん。この前まで部屋から出ることすら嫌がってたのに。」

「うん、恭ちゃんと出かけてから頑張りたくなったの。私って走ることもできなかったのよ。今は早歩きくらいのペースで1時間くらい歩いてる。」

一緒に出掛けたのはたった2週間前だと思っていたが2週間という時間の間に理花がどんどん先に進んでいっていることに淋しさを隠せなかった。

「それ、ずっと横で見てたかった。俺が大学に行っていつもと変わらない日常を過ごしてる間にどんどん理花は先に進んでる気がする。」

「ちがうよ。恭ちゃんはずっとずっともっと先にいるから私が追いかけてるんだよ。」

恭吾はグッと胸が詰まり、理花を抱き寄せるとキスをする。
理花はいきなりのキスに驚くが恭吾の背中に手を回し抱きしめ返す。
衝動的にキスをした恭吾はこのままもっと深くキスをしたいという欲望をなんとか鎮めると唇を離す。
離された唇を理花も名残惜しそうに見つめる。

「そんな顔するなよ。本当はキスもしちゃだめなんだ。草野先生に知られたら怒られる。」

「なんで?私って先生に許可もらわないとキスもしちゃだめなの?」
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