二人の距離~やさしい愛にふれて~
別れ
その日のデートでの理花はいつになく元気でよく笑っていた。
恭吾はそんな理花を見て嬉しかったし楽しかった。このままこんな風に幸せな時間を一緒に積み重せねて行くんだと思っていた。

だが理花は違った…
その日は日曜日で恭吾が帰る日。駅のホームまで理花と手をつないで歩いた。
ふいに理花が立ち止まり、すっと手を離す。

「理花?どうした?」

恭吾が振り返ると理花は寂しそうに笑っていた。その顔を見た恭吾は嫌な予感がして理花の前に行くと頬に手を当てる。

「またすぐ来るから、待っててな。」

自分が帰ってしまうのが寂しいのかと思った恭吾は理花にそう言うと理花はゆっくりと首を振る。

「恭ちゃん、あのね、今までありがとう。もう終わりにしよう。」

「えっ?な、なんで…」

「もう恭ちゃんは恭ちゃんの世界に帰ってね。私は大丈夫だから。ゆっくりだけど前に進めてると思う。恭ちゃんのおかげだよ。本当に本当にありがとう。」

「なんだよそれ…お礼とかいいし俺は理花とずっと…」

恭吾は言い終わらないうちに理花から両手で口を塞がれる。
恭吾の顔はみるみる険しくなり理花の手を剥がそうともがいた。

「もういいの。どう足掻いても過去は消せなくて…それが辛いの…きれいなまま恭ちゃんに会いたかった。」

何とか口元の手を剥がす。

「過ぎたことは変えようがないだろ?俺は今の理花と幸せになりたいと思ってる。それじゃダメか?」

「ダメ、ダメなの。私はあまりにも自分で自分を汚しすぎたから…でも恭ちゃんと幸せな夢が見れたから……もう十分だから…ここでバイバイしよう。」
< 172 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop