二人の距離～やさしい愛にふれて～

「悪かったね。親御さんたちはいい気分じゃないだろうね。渡部からも君が容疑者だって言われたみたいで。本当に疑っている人にあなたは容疑者ですとは言わないからね。安心してほしい。」

「はい。昨日渡部さんも本気で疑っていないって言われました。」

そうは言うもやはり恭吾は緊張で息が詰まりそうだったが、机の下で拳を握りしめ何とか平静を装った。

「まず、ここで話したこと全て記録させてもらうよ。話したくないことは答えなくていいから。じゃあ、まず名前と生年月日を教えてくれるかな。」

質問に答えると理花と出会ったきっかけや関係性について聞かれた。
恭吾はできるだけ正確に思い出しながら森永に話した。

「そうか、長谷川理花さんとは大学が違うからどこで知り合ったのか疑問だったんだ。」

「えっ？大学？あいつ大学行ってたんですか？」

恭吾は驚いて思わず聞き返していた。

「ははっ、参ったな。君は彼女のことほとんど知らないのかな？確かに君から聞いた話と照らし合わせると彼女と君が知り合ったころには全く大学に彼女が通った形跡がないんだ。」

「じゃあ…あの本は理花自身のもの？」

恭吾は倒れたままになっていた棚を起こした時このこと思い出していた。

「あの本とは？」