続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「そんなに見惚れちゃって。そのページあげよっか?」

 カオルがニッっと笑いながら言った。


「べっ……別に見惚れてなんかないわよ!」

 奈津美は赤面しながら雑誌から目を離し、カオルに返す。


 カオルはその様子を見ながらクスクスと笑う。


「でも雑誌に載るだけあって、美味しそうよね。ここって奈津美の家の近くよね。行ったことあるの?」


「ううん。お店の場所は知ってるけど、店の中までは……。でも、旬がたまにケーキ買ってきてくれるから、食べたことはあるよ。やっぱり美味しかった」


 実は、奈津美はそのカフェに行っことがあるのは店の前までで、客として行ったことはなかった。

 奈津美の誕生日やクリスマスなどのイベントの時、金欠の旬がプレゼントとして買ってくるので(店員だから少し安くしてくれるらしい)その時に食べたことはある。

 人気があるだけあって味は確かだ。


「へぇー。いいなぁ。……あ、そうだ。今日仕事終わったら行かない?」

 カオルがそう提案した。


「えっ……」

 奈津美はカオルを見て固まる。


「何?」


「今日は……確か旬がカフェの方で夕方から夜までバイトだって言ってたから……」


「そうなの? それなら丁度いいじゃない」


「え!?」


 奈津美は、遠まわしに今日はやめておきたいと言ったつもりなのだが、カオルには伝わっていない。

 ……いや、カオルの場合、気付いていてわざと言っているのだ。


「それじゃ決定ね」

 カオルは笑顔でそう言った。


 居酒屋の時と同様に、奈津美には選択権はなかった。

 しかし、居酒屋の時と違って、カフェは特に行きたくない理由がない。

 旬と顔を合わせたら何となく気恥ずかしいというだけで、どちらかというと、奈津美も行ってみたいと思っていたので、一人でいく必要がなくなったといえばそうだ。

 まあいっか。たまには行ってみても。

 奈津美は気軽に考えて行くことに決めた。






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