続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

 今日はいつもより聞き分けがないというか、しつこい気がする。


 旬はいつもこうやって、甘えてくる。それが旬の気質だからか、奈津美が年上で、つい甘えてしまうからなのかは分からない。


 奈津美だって、そうやって甘えてこられるのは嫌いじゃない。

 自分だって、どちらかといえば甘えたいと思うのも本音だが、甘えられるのだっていいと思う。


 相手が自分を必要としていると、相手にとって自分は必要なのだと思えるから。


 ずっと、そう思っていた。

 旬は、自分がいないとダメなのだと。

 旬には奈津美が居ないと何もできないのだと。


 そう思っていたせいで、気付けなかった。

 旬が本当はどう思って、考えているのか。

 それを知ろうともしていなかった。



「ナツ?」

 何も反応を示さない奈津美を不思議に思って、旬は首を傾げた。


「旬。……話しておきたいことがあるの」

 奈津美は旬の腕を解きながら言った。


「え……」

 きょとんとしている旬を尻目に、奈津美はテレビの電源を切り、旬の正面に正座した。


「旬。……旬は、これからどうするつもりなの?」

 真剣な眼差しで旬を見つめ、奈津美は言った。


「どう……って?」

 旬は不思議そうに首を傾げるだけだ。


 少し、切り口が唐突だったかもしれない。


「将来っていうか……これからのこと。これからもずっと、バイトで生活していくつもりなの?」


 すると旬は目を見開いた。


「そんなわけないじゃん。ちゃんと仕事見つけて働くつもりだよ」


「仕事見つけるって、何か当てはあるの?」


「……当てって言われたら、ちょっと厳しいけど……でも、このままのつもりはないよ、絶対」

 旬はまっすぐに奈津美を見つめ返した。


「旬がそのつもりでも、高卒で一年フリーターやってた旬が簡単に仕事見つけられるわけないでしょ」

 少々きつい言い方だが、奈津美は思ったままを口にした。

 ずっとそう思っていたけれど、ずっといわないでいたことだ。


 しかし、それも事実で、旬も分かっているようだ。

 何も言い返さずに、ただ口を噤んでいる。

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