檀家地獄
篤の後ろに黒い影が近づいた。

篤は、気配を感じてひらりと身をかわして、後ろを見た。

(きつね)のお面を(かぶ)った男が立っていた。

今、篤を用水路に突き落とそうとしていた。

覚悟した篤はポケットに手を入れてギュウっと(こぶし)を握りしめた。

お面を被った男は篤に襲いかかり、用水路に突き落とした。

「助けて!」

篤は精一杯叫んだ。

男は篤の頭を抑えつけた。

篤の頭が水面下に沈んだ。

その瞬間。

ドスッ

鈍い音がして男が倒れた。

「篤、(つか)まって!」

「お母さん!」

篤の母は持っていた(くわ)を捨てて、篤を用水路から引き揚げた。

お面の男がゆっくり立ち上がった。手には落ちた鍬を持っていた。

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