ボーダーライン。Neo【中】

 真向かいのデスク同士で、小さな火花が散るような、不穏な空気を感じてしまう。

 あたしは睨み合う先生方を、ハラハラした面持ちで見守っていた。

「それは目立ちたいが故に計算した行為じゃ無いでしょう? 結果、そうなっただけです」

 問題として挙げた檜の行動を、ひとつとして否定出来ない斉藤先生に、田崎先生はそれ見た事か、と鼻で笑った。

「そりゃあ今回の噂の様に、桜庭先生だけが悪く言われるのは、私もどうかと思いますけど。
 檜くんも言ってみれば被害者なんですよ? それを問題児だから、なんて。
 そんな無責任な言葉で見放すのは、教育論に反します!」

「あ、あのっ」

 熱くなる斉藤先生を見て、あたしは慌てて立ち上がった。

「あたしの事は、良いんです。単なる噂ですし。……全くの、事実無根ですから」

「そうですよね!」

 キッパリ否定するあたしを見て、田崎先生は嬉々として笑みを浮かべた。

「だったら良いんです」

 斉藤先生は眉を下げ、その目は不憫さを物語っていた。

 あたしはまた椅子に座り直し、自分のデスクを睨む様に見つめた。自然と膝で拳を握り締める。

 斉藤先生のように、檜を庇えない自分に、ただただ苛立ちを感じていた。


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