ビッチは夜を蹴り飛ばす。
*11.終わらない物語と知っておいてほしい幾つかのこと
「………何やってんの…」
硯くんのおれと一緒に遊びましょを明るい日の下ではじめて目の当たりにしたけれど、ナイフを蹴られて逆上し突進してきた強盗は顔目掛けた回し蹴りでいとも容易くのされてしまった。
足なっがいなあ、ワンパンだー、ってぱちぱち拍手するあたしにコンビニの店長がワッと前に出る。
「何やってんの!?」
「向かってきたから」
「なんでいんの!?」
「帰ってきちゃった」
ぶい、と二人揃って目元でVサインしたらはぁあ!? って叫ばれる。
そして先にとっととポーズを解いた硯くんがヤンキー座りして床にのびた男の前髪を掴んでぐいと起こす。今ハワイTでしかもサングラスおでこに置いてるからいかにもヤーさんなんだよなって思った矢先に入り口の戸が開いてお客さんがギョッとして、三人挙って「いらっしゃーせー」で出迎える。
「言ったでしょ店長になんかあったら地球の裏側からでも駆けつけるって」
「それでわざわざ駆けつけたの!? すごくない!?」
「野生の勘で」
「お金もったいないよ!」
「心配せずとも帰省金はおれのポケットマネーです」
こいつのもおれ負担、って指をさされてへぺろ、って可愛こぶってみるけどハワイから日本に帰省するのってこれ実はかなりの額だよね。金勘定は全部硯くんに丸投げしてるから知らんけど、って硯くんを見上げる。
「ごめんね生涯かけて返すよ」
「いいよ別に体で払ってもらうから」
「んっ?」
「ひとまず一旦おかえりいいぃ」
会いたかったよ、ってぎゅーっと抱き締めてくれる店長さんのパパみすごいなと思ったけど、強盗は容赦なく踏まれたことでぐうっと苦しそうな声をあげていた。
これを言ったら店長さんががっかりするから口に出しては言わないけど、あたしと硯くんが日本に帰省したのには他に別の理由があった。
全部が終わって、心と身体にもゆとりが出来て話すべきことを伝えたら見えなかったものが輝き出した。例えばいつも通る同じ道を別方向から歩いてみたらまた違って見えるのとおんなじで、