もう二度ともう一度〜高見真知子の場合〜

「愛の死闘!天使対中年!の巻です」

「なるほど・・よかろう!もう一度行くがいい。その時、お前の意識を通してこのエゥロセウスがその男を射止めてやろう。私のこの愛天使(キュピト)の矢を持ってすれば、時空すら貫きその男の胸に突き刺さり、必ずやお前の愛の奴隷にするだろう!」

 た、頼もしい!彼女も三度過去へ向かいました。

「受けよ、愛の祝福を!」

 エゥロセウスさんがやってくれた様です、矢は次元すら跳躍して消えて、早川さんに命中した様です。
 しかし、数分後・・


「このインチキ天使!お前、ペテン師だろ!?」

 凄まじい形相で彼女がアウトして来ました。

「痛い!痛い!引っ張らないで!・・おのれ、早川とやら!こうなればこの愛の守護者、愛天使(キュピト)のエゥロセウス自ら出向いて、愛と言う名の地獄に突き落としてくれるッ!」

 私達は、しばらくその戦いを見ておりました。

「お前が早川か?」

「誰だ、お前!?」

「私は縁結びの愛天使(キュピト)エゥロセウス、今よりお前に愛の祝福を授けに来た・・!」

 なにやら早川さんの深層意識、魂に近い空間で戦いが始まる様です。

「お前はどうやらよほど強情な男らしい・・私自ら、直接その魂を射抜く!そうすればもはや抗えぬぞ!受けよ、祝福!愛の矢エンジェリックアロー!」

 それは早川さんの精神体の、確かに胸に刺さりましたが・・

「ナ、ナニィ〜バカな!?この男、矢を自ら抜こうと言うのか!」

 早川さん、粘っていますね。

「エ、エゥロセウスよ・・恋や愛より、大切なモノが貴様にわかるか?」

 思わぬ方向へバトルが白熱してまいりました。

「フッ、人間のお前に教えられる事など、この愛天使(キュピト)のエゥロセウスにあると思うか?・・死に損ないの相手ももはや面倒!この私の最大の奥義で愛に溺れるがいい!」

 あの構えは早くも決め技を出そうと言う所でしょうか?彼女は隣でエゥロセウスさんサイドで祈っています。



「ラブ・インジェクション!!」

 両の手をハートにして叫ぶと、カッ!と閃光が走りました。早川さん、どうなってしまったのでしょうか?あ、立っています!

「バ、バカな!人間ごときが私のラブ・インジェクションの威力を受け止めただけで無くそれを押し戻しているだと!?」

 早川さんはもうほとんど力は残っていないように見えました。一体なにが彼の支えなのでしょうか?

「お、お前に愛のなにがわかる、愛天使(キュピト)が聞いて呆れるぞエゥロセウス!ただ傍らにいるだけが愛ではない、例え罪を背負おうとも・・相手を真に思いやる事、それこそが真心だッ!」

 遂に両者のエネルギーが拮抗し、空間が歪み始めています。

「バカな、やめろ!このまま力がぶつかり合えば、この空間ごと破壊し、その威力に弾き飛ばされる。神の加護がある私は助かっても、お前は別次元に吹き飛び消えて無くなるぞ!!」

 そして、爆発の様な光が見えました。


「うわぁあぁあぁ〜〜!」(ドシャアッ)

 エゥロセウスさんが戻って来られました。天使さんに死神の仕事をするのは初めてになるかもしれません。
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