1ページホラー
カラオケ
(男性26歳、会社員)

その日は営業で外回りをしているが、先方都合でのキャンセルがあった。

おかげで3時から暇になった。今日日飛び込み営業なんて流行らない。

カラオケでも行くか。

なんとなくそう思った。社会人になってからあまり行っていなかった。行ったとしても忘年会やら歓迎会やら行きたくない場合が多かった。

久しぶりに自分のため?に行くことにした。

都内なので適当に近くの店に入った。

いつもの二昔前の流行りではなく、自分の好きな歌を歌った。

予定の2時間近く歌い、声も枯れた。ジュースを飲んでいると10分前コールがかかってきた

「延長……ザッ、も、い、ザッ、すか……」

よく聞こえなかったが「大丈夫です」と言って切った。

部屋を出る準備をしているとすごく視線を感じた。カラオケ部屋には防犯カメラがあるというがそれ、だろうか。

部屋を出て、エレベーターを待っている時も視線を感じた。

エレベーターに乗っている時はなんとなく左側を空けた。俺一人しか乗っていないが真ん中に立つ気がしなかった。

営業サボって無意識にびびってるのかな、と思った。

俺は自分で言うのも何だが真面目な方だと思う。実は営業職になって初めて今日サボったのだ。何だかサボりたい気がして。

とりあえず会社に戻って報告書を書いて、部長に確認をもらいに行った。

部長は俺を見て一言、「明日は会社に来るな」と言われた。

頭が真っ白になった。なんの冗談だろうか。

「ちょっとこい」

俺は部長に商談室に連れていかれた。

「お前あそこのカラオケやサボって行ったろ」

ドキッとした。部長に見られていたのか。何とか言い訳をしようとしどろもどろになっていると

「明日は有給使ってこの近くの大きな神社あるだろ。そこ行ってお祓い受けてこい。その後、家に帰って一歩も出るな」

意味がわからなかった。もう部長の顔を見ながら黙ってるしかなかった。

「はぁ……お前の左肩にいるんだよ。女が。もう今日はこのまま帰れ。報告も明後日でいい」

部長はそれだけ言うとそそくさと自分のデスクに戻った。

俺は正直よくわからないまま帰って、部長の言うようにした。確かに左肩が軽くなったような気もした。

後日部長に話を聞くと、前にも何回かあったらしい。憑いてる物はバラバラだが場所は必ず同じカラオケ屋らしい。

部長がそんなもの見えるとは知らなかった。

「俺も同じ経験あるんだよ。前に先輩、今の統括が部長の時に言われたんだ。多分、部長位になると色々見えるようになるんだな」

部長は苦笑しながら言った。
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