本日よりニセカノはじめました

first lie


「彼女のふりしてくれない?」


唐突に、彼が私に向かってそう言った。

自分に言っているのか理解し難かったが、この場には私たちしかいないため、時間とともにかろうじて認識することができた。


(え、、、聞き間違い、、ではない、、よね、、)



彼とこのように話すのは初めてであり、元の赤面症も相まって、身体中から変な汗が噴き出しそうである。





彼は、私が働く店の常連客である。

おそらく180センチくらいあるであろう背丈に加え、程よく筋肉もあり、足も長くモデル並みである。

少し長めの前髪から覗く奥二重の目は、誰もが夢中になってしまう魅力がある。

パリッとしたスーツは、そんなハイスペックな彼をさらに引き立てるセンスのいいデザインだ。



そんな素敵な彼が、どうしてこんなしがないカフェ店員に、彼女のふりをして欲しいと言うのか。


それを説明するには、少し過去に立ち返る必要がある。

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