先生がいてくれるなら①【完】
* * * * *

昼休み、数学準備室で書類作成やら授業準備などの雑用をしながら、生徒が教材を取りに来るのを待っていた。


しかし公立高校というのは私立と違って本当にどうでも良い雑用が多い。


はぁ、と溜め息を吐いて、プリントアウトし終わった書類に不備が無いか目を通した。



準備室の扉がノックされる音が聞こえ「2年5組の数学係で~す」と、暢気な声が追って聞こえる。


「はい、どうぞ」


素っ気なく答えると、扉が開いて男女二人が入室して来た。



──またか。

コイツら、ほんと懲りないな。



二人の手は、また指を絡めて繋がれている。

俺は心の中で大きな溜め息を吐いた。


適当に指示をして、さっさと出て行けと言わんばかりの態度を取る。



「悠斗、手、離して」



──あ?



確か、今朝の教室では『倉林君』と名字で呼んでなかったか?


それがたった数時間で下の名前で呼ぶとか、何それ。



しかも、男子生徒の態度がいちいち俺の神経を逆撫でする。


俺はイライラしながら「じゃ、お疲れ様」と言い放ち、また書類に目を落とした。



いちいちカップルのイチャイチャに付き合ってられるほど教師はヒマじゃないんでね。



さっさと出てけ。そんで、勉強しろ。



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