先生がいてくれるなら①【完】
「美夜ちゃん……私、最低だよね」
私がそうつぶやくと、美夜ちゃんは私の背中にそっと手を当てて「そんな事ないよ」と言って、ポンポンと優しく叩いた。
「誰だって、どうしても認めたくない想いが生まれる事はあるよ。私はそれが最低だとは思わない」
「美夜ちゃん……」
「いいじゃん。今から向き合っても全然遅くないよ」
「そうかな……」
「そうだよ。だって倉林君だって、あれだけアピールしててもはっきり告白したのはついこの間なんでしょ? もうお互い様だよね。だからそんなに気にする必要ないんじゃない?」
にっこり微笑む美夜ちゃんは、私には女神様に見えた。
湿り気の高い風が、私たちの頬を優しく撫でるように通り過ぎる。
ついさっきまで自らの重みに耐えられずに水滴を地上に落とし続けていた鉛色の空だけど、少しずつ明るくなって来ている。
それはまるで私の心をそのまま写し取っているようにも見えた。
これからちゃんと向き合えば、少しは最低じゃなくなるかな。
先生とも悠斗とも、逃げずに真剣に自分の気持ちに向き合えば……。
ありがとう美夜ちゃん。
美夜ちゃんが親友で、本当に良かった──。