先生がいてくれるなら①【完】

手を繋がれたり、抱きしめられたり……って言う部分を美夜ちゃんに言うかどうか思案しながら3階の廊下を歩いていると、藤野先生が数学準備室前の廊下を歩いているのが中庭越しに見えた。


「おっ、噂をすれば。明莉、手でも振れば?」

「やだよー。どうせ気付かないだろうし」

「じゃあ私が振っとこうかな」

「えっ」


美夜ちゃんが先生に向かって手を振ろうとしたので、私は慌てて美夜ちゃんの手を掴んで止めた。


先生は準備室の扉の鍵を開けて中に入る──その直前にフッとこちらを振り仰ぎ、手をヒラヒラと二度振って準備室に消えた──。




「!!」




美夜ちゃんが私の背中をバシバシと叩いて、声なき声を出している。


「ちょ、美夜ちゃん、痛い……」

「あ、あ、あ、明莉~!」

「はい……」


「あ、ああ、愛されてるねぇ!」


美夜ちゃんの言葉に、一気に顔が熱くなった。


愛されてるかどうかは分からないけど、先生のお手振りは結構な威力で私のハートを揺さぶったのは間違いない。



< 430 / 455 >

この作品をシェア

pagetop