先生がいてくれるなら①【完】
* * * * *

特別教室A棟1階の一番奥の角。

階段脇の小さな2部屋が、数学準備室と数研の部室。


部室の中央に長机が向かい合わせで4台あり、壁際には書棚が並んでいてたくさんの数学関連の書籍が収められていた。


「うわ、数学の本ばっかり……」


私が絶句すると、先生は得意そうに言う。


「立花が数研に入ったら活動費が増えるから、また何冊か増やせるんだよね」

「先生、まさか、そのために私を数研に……?」

「ふっ、協力してくれてありがとう」


私はここで、先生の口調と雰囲気が変わった事に気がついた。


教室で授業をしている時と数研の部室では、多分同じ口調。


それと違っているのは、準備室にいる時と、病院や車の中などの学校関係者が確実にいない時。



──えっと。

先生は、もしかしなくても、やっぱり二重人格ですか……?


「先生……」

「ん?」




「先生のこと、ジキルとハイドって呼んでも良いですか?」




ベシっ──!



私は先生にプリントの束で頭を叩かれた──。




暴力反対──。


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