雪と少女と執事と令嬢

朝と幸せ

シルビアは誰かの手が触れる感覚がして目が覚めた。目を開けるととても綺麗な顔が見えた。ばさっと上身体を布団から上げて周りを見回す。机をみると、もうすでにとても美味しそうな朝食ができていた。はっとして「すすすすうさん!おはようございます!ごめんなさい!お客様にご飯までご用意させてしまって!」と慌てる。

その様子を見て少し顔がほころぶのを抑えながら「おはようございます。シルビアさん。良い朝ですね。ご飯なんて魔法を使えばたいした手間ではないのです。お気になさらないでください。さぁ、冷めないうちに一緒に食べましょう?」と微笑む。

誰かと朝食をたべるなんていつぶりだろうとシルビアは思いながらパンを口に運ぶ。ん?家にあったパンのはずなのに…口当たりが全く違う…美味しい!スウのほうをみるとこちらを見て微笑んでいた。なにを考えていたか分かったようで、「どうですか?パンに構造が変わる魔法をかけました。人体に害はないのでご安心を。好きなだけお食べくださいね。」パンを頬張りながら、「はい!誰かと食べる朝食は久々でとても幸せです。」内心、この幸せがずっと続くと良いのになぁと少しこの先のことを考えて顔が曇る。この幸せな感覚を取り戻してしまってこの先大丈夫だろうかと思っていると、
「どうしましたか?なにか考え事ですか?」
と心配されてしまった。
「い、いえ!こんな幸せを知ってしまって幸せものだなぁと新しい家で暮らしはじめたらきっとこの感覚も薄れてしまうのだなぁと…」
スウは笑みを抑えきれなかった、良い感じだ。この調子で私なしでは生活できないようにしていきたい…
「心配要りませんよ。新しい家では、もっといろんな幸せを知ることができるでしょうから。」
とにこにこと笑う。シルビアもつられてにこにことしてしまった。優しい人だなぁと信頼しているが、スウの心の内は下心でいっぱいだった。
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