記憶シュレッダー
出来事
「なんでこんな問題が解けないの!」


それは夜中の1時頃だった。


あたしは机に広げているテキストを見て頭を搔き毟った。


このテキストはたった一週間前にやったものだった。


それをもう1度勉強し直しているのだけれど、なかなか問題が解けないでいた。


「これができないと、高校に合格できないのに……!」


テキストの表紙に書かれているのは、由香里と同じ高校の名前だ。


由香里が目指している高校には、あたしも行きたい学科がある。


それはパソコン関係の学科で、高校卒業後すぐに使える資格が取得できるコースだった。


両親を早くに亡くしてしまったあたしを大切に育ててくれた祖父。


その祖父に少しでも早く恩返しがしたかった。


あたしは歯を食いしばり、またテキストに視線を向けたのだった。
< 183 / 213 >

この作品をシェア

pagetop