最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
全身から血の気が引いていく。もうこのまま目を開けないんじゃないか──そんな縁起でもない予感が駆け巡り、感じた経験のない恐怖に支配される。

何度も名前を呼びかけるも彼女の反応はなく、俺は助産師のひとりに分娩室の外へ連れ出されてしまった。そして、冷静な彼女にこれからの対処について聞かされる。


「出血量が多く、ショック状態を引き起こしています。輸血などの処置を行うため白藍総合病院に搬送しますので……」


耳には入ってくるが、ただ文字が羅列されているような感覚で、頭ではなにも考えられない。

呆然としている間に救急車が到着し、一絵はストレッチャーに乗せられていた。救急車の中へ運ばれていく彼女に、手を伸ばしそうになる。


「一絵……」


胸を引き裂くような不安と後悔で声が震え、祈ることしかできないもどかしさで頭を抱える。

お前、まだ俺たちの子を抱いていないだろ? まだ、ちゃんと仲直りもできていない。〝愛してる〟って言葉も伝えていないんだ。

頼む。どうか、どうか無事で──。


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