最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「今日、一緒に来られてよかったです。慧さんと、ふたりで来られてよかった。……素敵な思い出になりました」


美しい夜景を眺めたまま、精いっぱい口角を上げてそう伝えた。どうしようもない寂しさを抱いていることがバレないように願いながら。

数秒後、私の視界になぜか慧さんの手が入り込んできた。一瞬、結婚指輪がきらめいたその手は私の頬にあてられ、ぐいっと彼のほうを向かされる。

そして、彼がどんな表情をしているのか目に映るよりも早く、唇を塞がれた。

──え? な、んで、キスを……?

予想外の彼の行動で、心臓が飛び跳ねると同時に脳内がパニックに陥る。

私……今回は〝キスしてほしい〟なんてお願いはしていないですよ? 完全に慧さん自身の意思、ですよね?

頭の中にハテナマークが飛び交っている間にも、少し角度を変えて唇を優しく啄まれ、「んっ」と甘い声が自然に漏れた。

……ダメだって。こんなふうにされたら、勘違いしてしまう。愛されているんじゃないかって──。
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