背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 まあ、お互いの両親が、相手の娘と息子を褒め殺し始めた。
 内容はともかく相手の名前くらい覚えて置かねぇとな…… 
 美月と言う名を頭に入れた。


「悠麻さんは、あの、キザキ家具のデザイナーをされているとお聞きしました。このホテルの家具も、キザキ家具のものを多く使われているようですが、悠麻さんがデザインされたものもあるのですか?」


 彼女の父親が俺の方を見て言った。

 意外だった。家具に興味のある人でなきゃ。キザキのものだとは気づかないだろう? 分かってもらえる事は少ないので、正直嬉しい。


「えっ? キザキの物だとお気付きですか?」


 彼女の父は建築家らしい。キザキの商品を使ってくれることがあるとの事。
 家具に興味があるらしく、つい俺も仕事の話に乗ってしまった。
 それの方が俺も気楽だ…… と思っていたが、いきなり母が俺の肘を突いた。


 彼女に気遣えってことか? 


 彼女の方を見るが、料理を美味しそうに口に入れ、満足している様子だ。
 別に俺と話なんてしなくても良さそうに見えるが仕方ない。


「お料理はいかがですか? 美月さんは、何がお好きですか?」


 無難な会話で振っておこう。

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