約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「それもあるけど、うち弟がゲーム好きで。割と何でも揃ってたから」

 嘘をつく必要などないので、ありのままを説明する。確かに小学校を卒業するまでは、雪哉ともよくテレビゲームをして遊んでいた。けれど雪哉と離れてからも、弟とたまに遊んでいたのでその話に偽りはない。

(こういう事は、話せるんだけどな)

 秘密のウェイトが違う。昨日の資料室での出来事はヘビー級だが、昔の思い出話などせいぜいライト級だ。本当は弘翔に隠し事などしたくないのに、話すと全てが崩壊してしまいそうで、とても口には出せそうにない。

 何とか溜息を押し隠して、コントローラーを握る。

 画面の中では、愛梨が選んだ女の子のレーサーがトラップやアイテムが散りばめられたコースを爆走していく。見事に1着でゴールしたキャラクターがくるりと踊ると、まんまと愛梨に出し抜かれた弘翔が、ちぇっと唇を尖らせた。

「ちゃんと上手いなぁ。画面と一緒に体が傾くレベルだと思ってたのに」
「えー? 体動かしても、画面の中は動かないでしょ」
「いやいや、それは愛梨が出来るからだって。出来ない子はホントに体傾くの」

 そう言われて思い出す。弘翔の言う通り、同級生の女子はテレビゲームをやると画面の中のキャラクターにつられて本人の身体も動いたり傾いたりしていた。けれどそういう子は、決まってテレビゲームなどに全く興味のない子だ。

 女子同士でつるんでは流行の文房雑貨や少女漫画などに熱量を注ぎ、中学校に入る頃にはいち早く色恋沙汰に身を投じる、いわゆる女子力の高い子たち。男勝りだった愛梨とは早々に趣味が合わなくなった、女子の中の女子だ。
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