約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「おじさん!? おばさん!?」

 迎えに来た雪哉に導かれるまま品川駅に赴くと、雪哉の父・晴哉(はるや)と母・和花奈(わかな)がキャリーケースを引っ張りながら愛梨と雪哉に近付いてきた。思わず大声を上げてしまうと、雪哉の母の顔がパァッと明るく綻ぶ。

「わあぁ、愛梨ちゃん! 久しぶり~!」

 途中でキャリーケースを手放して愛梨に抱き着いてきた雪哉の母は、昔と変わらずテンションが高い。愛梨の母といい勝負だ。

「お、お久しぶりです…!」
「やーん。髪形変わらないのね~。昔の可愛い愛梨ちゃんのまんま~!」

 ぐりぐりと愛梨の頭を撫で回しつつ、存在を確かめるように身体中を触られる。

 雪哉の母は愛梨の母と同じ年齢だが、昔は常にロングスカートとエプロンを身に着け、割と落ち着いた格好を好んでいた。だが今はロールアップした白いパンツに真っ赤なヒール、デコルテが開いたニットを身に着け、ショルダーバッグの金具には玉虫色のサングラスが引っかけられている。品川駅ではさほど浮かないが、元々住んでいた田舎でこの格好をしていると結構目立つんじゃないかなぁと思うほどだ。

「でもすごく女性らしくなっちゃって~」
「母さん。そろそろ愛梨を離してあげて」

 雪哉がげんなりしたように母の行動を諫めたが、それでも雪哉の母のマシンガントークは止まらなかった。

お母さん(愛子ちゃん)お父さん(勇司さん)は元気? 響くんは?」
「元気ですよ。響平(きょうへい)は仕事で大阪にいるのでお正月しか会ってないですけど、多分元気です」

 聞かれた言葉に応えると、雪哉の母がうんうんと笑顔のまま頷いた。それから愛梨の姿をもう1度眺め、もう1回ハグされた後にようやく自分の息子の存在を思い出したようだった。

「あ、雪は? 元気だったの?」
「元気だよ。息子の扱い雑すぎるから」
「えぇ~、そんなことないわよ~」
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