約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

 もどかしいような、くすぐったいような心地と弘翔の強引な態度から、自分が随分と想われていて、愛されている事に気が付く。優しい恋人は、愛梨を手放したくないと教えてくれる。

「そんな事、言わないよ」

 そんな事言わない。今は雪哉以上に弘翔の事が大切だから。まだ1か月の関係だけれど、弘翔と一緒にいるだけで毎日が楽しいと知っているから。

 恋人とは、本来ちゃんと伝え合って、信頼し合って、苦難を解決するのだろう。経験に乏しい愛梨は、それさえ知らずに1人で悩んで迷ってしまった。けれど弘翔に優しく抱きしめられるだけで、胸のつかえがポロリと剥がれ落ちる気がした。だからやっぱり、話して良かったのだと思う。

「うん。愛梨がそんな事言い出すような子じゃないって知ってる。ちょっと焦っただけ」

 弘翔が少しだけ情けない心情を吐露するので、思わず笑ってしまう。

 大丈夫。甘酸っぱい思い出と、ある筈のない妄想にあてられて、少し迷ってしまっただけだ。けれど弘翔は、ちゃんと愛梨を導いてくれるから。

「他の男と2人きりで会うのは、嫌だからな」
「ん。わかってる」

 愛梨の返答を聞くと、弘翔がふと耳朶に唇を押し付けてきた。急に熱い感覚を感じた気がして顔を上げると、弘翔がじっと瞳を見つめている。

 不意に空気が変わるのを感じてゆっくりと目を閉じると、唇に小さなキスが落とされた。
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